
三重積で各方式を比べるPython|トカマク・レーザー・実験炉の到達点
2026-10-13 ・ 実践
ローソン条件の三重積 n·T·τ は、方式が全く違う装置でも同じ物差しで比較できる優れた指標です。この記事ではPythonで、トカマク・レーザー・各実験炉の到達度を並べ、点火までどれだけ来ているかを可視化します。
三重積で横並び比較
密度も閉じ込め時間も方式でまったく違いますが、掛け算した三重積なら同じ土俵に乗ります。点火の目安は約 3×10²¹ keV·s/m³。
準備
pip install numpy
① 各方式の三重積を計算
代表的な運転条件(おおよその値)で比較します。
import numpy as np
IGNITION = 3e21 # 点火のおおよその閾値 [keV·s/m^3]
# (密度 n[1/m^3], 温度 T[keV], 閉じ込め時間 τ[s])
devices = {
"トカマク(大型)": (1e20, 15, 3.0),
"レーザー(慣性)": (1e31, 15, 1e-11),
"小型実験装置": (5e19, 10, 0.5),
"点火級プラズマ": (2e20, 20, 2.0),
}
for name, (n, T, tau) in devices.items():
tp = n * T * tau
ratio = tp / IGNITION
print(f"{name:<14} 三重積 {tp:.1e} 点火比 {ratio:5.2f}倍")
出力例:
トカマク(大型) 三重積 4.5e+21 点火比 1.50倍
レーザー(慣性) 三重積 1.5e+21 点火比 0.50倍
小型実験装置 三重積 2.5e+20 点火比 0.08倍
点火級プラズマ 三重積 8.0e+21 点火比 2.67倍
密度が11桁も違うトカマクとレーザーが、三重積では同じ土俵に乗って比較できます。これがローソン条件の便利さです。
② 何を上げれば点火に届くか
小型装置が点火比に届くには、どのパラメータをどれだけ上げればよいか見ます。
n, T, tau = 5e19, 10, 0.5 # 小型装置
current = n * T * tau
need = IGNITION / current
print(f"現状の三重積: {current:.1e}(点火まであと {need:.0f}倍)")
# 例:閉じ込め時間だけで補うなら
print(f"τを {tau}s → {tau*need:.1f}s にすれば点火相当")
「あと何倍」が一目でわかります。密度・温度・時間のどれを伸ばすかは方式次第。トカマクは時間を、レーザーは密度を稼ぐ——役割分担が三重積という共通言語で見えてきます。
なぜ掛け算が効くのか
密度・温度・時間はそれぞれ単独では意味が薄く、3つ揃って初めて核融合が成立します。掛け算にすることで「どこかが強くても、どこかが弱ければダメ」という本質を1つの数字に凝縮できる。だから方式を超えた比較が可能になります。
まとめ
- 三重積 n·T·τ は方式が違う装置を同じ物差しで比較できる
- 密度が11桁違うトカマクとレーザーも同じ土俵に乗る
- 点火比を見れば「あと何倍か」が一目でわかる
- ただし発電には燃料自給・材料など三重積以外の条件も必要
もう少し詳しく(背景と理論)
核融合炉の性能指標として最もよく使われるのが三重積 n·T·τ(密度×温度×エネルギー閉じ込め時間)です。ローソン条件を温度依存性まで含めて表したもので、D-T 反応の点火には約 3×10²¹ keV·s/m³ 程度が必要とされます1。この3つは独立に上げればよいわけではなく、互いにトレードオフや物理的な上限(ベータ限界や密度限界)を持つため、バランスの取れた同時最適化が求められます2。歴史的には、三重積はトカマクの大型化とともに指数的に向上し、半導体のムーアの法則にたとえられるほどの進歩を遂げてきました。ITER はこの三重積をQ=10相当まで引き上げることを狙っています3。
次の一歩 🌸
基礎はローソン条件、電力収支は電力バランス、閉じ込め時間は閉じ込め時間のスケーリングへどうぞ。