
第一壁・材料の課題|1億度の隣で耐える極限素材
2026-08-11 ・ 実践
核融合の実現を阻む、地味だけど超重要な壁——それが材料です。1億度のプラズマの隣で、装置はどう耐えるのでしょう。
プラズマに面する「第一壁」
炉の内側でプラズマに最も近い壁を第一壁と呼びます。ここは強烈な熱と、核融合で飛び出す高エネルギーの中性子を浴び続けます。ふつうの金属では、すぐ傷んでしまいます。
強烈な熱
プラズマからの熱負荷
中性子照射
材料が脆く・もろくなる
長期耐久
何年も交換せず使いたい
中性子が材料を「劣化」させる
中性子は電気を帯びていないので磁場で止められず、壁に突き刺さります。すると材料の原子配列が乱れ、金属が脆くなったり膨らんだりします(照射損傷)。しかも材料自体が放射化することも。これに耐える素材の開発が、実用化の大きなハードルです。
有力な材料
熱に強いタングステンや、低放射化を狙った特殊な鋼など、各国が耐熱・耐照射材料を研究中。材料の実データを取るための試験施設づくりも、日米欧で進んでいます。
もう少し詳しく(背景と理論)
核融合炉の材料は、核分裂炉より過酷な条件に晒されます。14 MeV の高速中性子による格子損傷(dpa)に加え、核変換で材料内にヘリウムと水素のガスが生成して結晶粒界に溜まり、脆化・膨潤(スエリング)を引き起こします1。もう一つの要請が低放射化——中性子で放射化しても短期間で減衰する元素で構成し、放射性廃棄物を減らすことです。ニッケルやモリブデンを避けた低放射化フェライト・マルテンサイト鋼(RAFM)や SiC/SiC 複合材が主要候補です2。プラズマに直接面するダイバータは熱流束が数十 MW/m² に達し、融点の高いタングステンが使われますが、中性子照射下での長期健全性は未確立です3。こうした材料を実環境で試すための強力中性子源(IFMIF-DONES 等)の整備が、実用化の前提として進められています。