
ベータ値をPythonで計算する|磁場閉じ込めの"効率"を測る
2026-10-05 ・ 実践
磁場閉じ込め核融合の「効率」を測る重要な指標が ベータ値(β) です。使った磁場に対して、どれだけ濃く熱いプラズマを閉じ込められたか——これが炉の経済性を大きく左右します。Pythonで計算して意味を理解します。磁気圧の続きです。
ベータ値とは
ベータは「プラズマ圧を磁気圧で割った比」です。
β = プラズマ圧 / 磁気圧 = (n·k·T) / (B²/2μ₀)
βが高いほど「弱い磁場で濃いプラズマを閉じ込められた」=効率が良い。磁石は高価なので、少ない磁場で多くのプラズマを閉じ込めたいのです。
準備
pip install numpy
① ベータ値を計算
トカマクの代表的な条件で計算します。
import numpy as np
mu0 = 4 * np.pi * 1e-7
kB = 1.381e-23
n = 1e20 # 密度 [1/m^3]
T_keV = 15
T_K = T_keV * 1000 * 11605
B = 5 # 磁場 [T]
plasma_p = n * kB * T_K
mag_p = B**2 / (2 * mu0)
beta = plasma_p / mag_p
print(f"プラズマ圧: {plasma_p/1e6:.3f} MPa")
print(f"磁気圧 : {mag_p/1e6:.2f} MPa")
print(f"ベータ値 : {beta*100:.2f} %")
出力はベータ値 約2.4%。トカマクのベータは数%程度が典型で、「磁気圧の数%ぶんのプラズマ圧」しか閉じ込められていない、という意味です。
② なぜ高ベータを目指すのか
同じプラズマ性能を、弱い磁場(安い磁石)で達成できるか比べます。
# 目標プラズマ圧を、異なるベータで達成するのに必要な磁場
target_p = plasma_p
for beta_target in [0.03, 0.05, 0.10]:
B_needed = np.sqrt(2 * mu0 * target_p / beta_target)
print(f"ベータ {beta_target*100:.0f}% → 必要な磁場 {B_needed:.2f} T")
ベータが高いほど、同じプラズマを弱い磁場で閉じ込められます。磁石が安く小さくなり、炉全体のコストが下がる。だから各装置が高ベータを競うのです。
装置ごとにベータが違う
トカマクはベータ数%と低めですが、球状トカマク(ST)やヘリカルなど、より高いベータを狙う配位もあります。高ベータは経済性に直結する一方、プラズマが不安定になりやすい。「どこまでβを上げても安定に保てるか」が設計の腕の見せどころです。
βには限界がある
ベータを上げすぎるとプラズマが不安定になり、閉じ込めが突然崩れます(ディスラプション)。だから各装置には「安定に保てるβの上限」があります。効率(高β)と安定性のトレードオフが、磁場閉じ込めの中心的な課題です。
まとめ
- ベータ値はプラズマ圧 / 磁気圧。閉じ込め効率の指標
- 高いほど弱い磁場で濃いプラズマを閉じ込められる=経済的
- トカマクは数%が典型。装置により狙うβが違う
- 高βは不安定になりやすく、効率と安定性のトレードオフ
もう少し詳しく(背景と理論)
ベータ値 β は「プラズマの圧力 ÷ 磁場の圧力」で定義される、磁場閉じ込めの効率指標です1。β が大きいほど、同じ磁場でより多くのプラズマ(=より多くの核融合出力)を閉じ込められて経済的です。しかし β を上げすぎるとプラズマが磁場を押しのけてMHD不安定性を起こし、閉じ込めが破綻します。この上限がトロヨン限界で、β_max ≈ g·I/(a·B)(g はトロヨン係数、I は電流、a は小半径、B は磁場)という経験式で表されます2。実際のトカマクの β は数%程度で、この小さな値が「磁場で高圧プラズマを閉じ込めることの難しさ」を物語ります3。球状トカマクは高 β を狙える構成として研究されています。
次の一歩 🌸
磁気圧の基礎は磁気圧をPythonで、閉じ込め方式は磁場閉じ込め、装置はトカマクへどうぞ。