
磁気圧をPythonで計算する|プラズマを"磁場で閉じ込める"力
2026-10-04 ・ 実践
磁場閉じ込め核融合では、超高温プラズマを容器に触れさせず磁場で宙に浮かせて閉じ込めます。その力の正体が 磁気圧。磁場がどれほど強い圧力を生むかをPythonで計算し、なぜ超伝導磁石が不可欠なのかを理解します。
磁気圧とは
磁場はそれ自体が圧力を持ちます。磁束密度 B の磁場が生む圧力は、驚くほどシンプルな式です。
磁気圧 = B² / (2μ₀)
μ₀は真空の透磁率。Bの2乗で効くので、磁場を強くすると圧力が急激に増します。
準備
pip install numpy
① 磁気圧を計算
トカマクの代表的な磁場(5テスラ)の磁気圧を求め、大気圧と比べます。
import numpy as np
mu0 = 4 * np.pi * 1e-7 # 真空の透磁率
atm = 101325 # 1気圧 [Pa]
for B in [1, 5, 12]:
p = B**2 / (2 * mu0)
print(f"磁場 {B:>2} T → 磁気圧 {p/1e6:7.2f} MPa({p/atm:6.0f} 気圧)")
出力:
磁場 1 T → 磁気圧 0.40 MPa( 4 気圧)
磁場 5 T → 磁気圧 9.95 MPa( 98 気圧)
磁場 12 T → 磁気圧 57.30 MPa( 565 気圧)
5テスラで 約100気圧、12テスラなら 約565気圧。深海のような圧力を磁場だけで生み出し、プラズマを押さえ込んでいます。
② なぜ強い磁場が要るのか
プラズマの圧力(密度×温度)を磁気圧で押さえ込む必要があります。プラズマ圧を計算して比べます。
kB = 1.381e-23
n = 1e20 # 密度 [1/m^3]
T_keV = 15
T_K = T_keV * 1000 * 11605 # keV → ケルビン
plasma_pressure = n * kB * T_K
print(f"プラズマ圧: {plasma_pressure/1e6:.2f} MPa")
B = 5
mag_pressure = B**2 / (2 * mu0)
print(f"磁気圧(5T): {mag_pressure/1e6:.2f} MPa")
print(f"余裕(磁気圧/プラズマ圧): {mag_pressure/plasma_pressure:.1f} 倍")
磁気圧がプラズマ圧を十分上回っていないと、プラズマを閉じ込められません。この比が、次の記事で扱うベータ値です。
Bの2乗が効く=磁石が主役
磁気圧はBの2乗で効くので、磁場を少し強くするだけで閉じ込め能力が大きく上がります。だから核融合炉は少しでも強い磁場を目指し、超伝導磁石が不可欠に。高温超伝導線材で強磁場を狙うのが、小型化競争の焦点です。
磁石にも力がかかる
磁気圧はプラズマだけでなく磁石自身にも巨大な力(数百気圧)として跳ね返ります。この力に耐える構造設計が難題。強い磁場ほど、それを支える構造の負担も増えるトレードオフがあります。
まとめ
- 磁気圧は B²/(2μ₀)。磁場の2乗で効く
- 5テスラで約100気圧、12テスラで約570気圧の圧力を生む
- プラズマ圧を磁気圧で上回って閉じ込める
- 強磁場のため超伝導磁石が不可欠。磁石にかかる力も課題
もう少し詳しく(背景と理論)
磁場はエネルギー密度 B²/(2μ₀) を持ち、これは力学的な圧力として振る舞います1。磁場閉じ込め方式では、この磁気圧で高温プラズマの膨張しようとする圧力(nkT)を押さえ込みます。両者の比がベータ値で、磁気圧がプラズマ圧を上回っていないと閉じ込めが成立しません2。磁気圧は磁場の2乗で効くため、少し磁場を強めるだけで閉じ込め能力が大きく増します——これが炉が10テスラ級の超伝導磁石を目指す理由です。一方で強磁場は、コイルに働く巨大な電磁力(フープ応力)という構造上の難題も生みます3。近年の高温超伝導(REBCO)による高磁場化は、装置を小型化できる可能性として注目されています。
次の一歩 🌸
閉じ込め方式は磁場閉じ込め、圧力比はベータ値をPythonで、磁石は超伝導磁石へどうぞ。