
ラーモア半径をPythonで計算する|磁場が荷電粒子を"巻き付ける"
2026-10-06 ・ 実践
磁場でプラズマを閉じ込められるのは、荷電粒子が磁力線に巻き付いてらせん運動するからです。その円運動の半径が ラーモア半径(旋回半径)。Pythonで計算し、なぜ磁場が"見えない壁"になるのかを理解します。磁場閉じ込めの物理です。
ラーモア半径とは
磁場中の荷電粒子は、磁力線のまわりを円を描いて回ります(サイクロトロン運動)。その半径は次で決まります。
r_L = m·v⊥ / (q·B)
質量が大きい・速いほど大きく、磁場が強いほど小さくなります。この半径が小さいほど、粒子は磁力線に強く"縛られ"、閉じ込めが効きます。
準備
pip install numpy
① イオンと電子のラーモア半径
核融合条件(15keV、5テスラ)で、重水素イオンと電子の旋回半径を比べます。
import numpy as np
e = 1.602e-19
keV = 1000 * e
B = 5 # 磁場 [T]
T_keV = 15
T_J = T_keV * keV
particles = {
"重水素イオン": 3.344e-27,
"電子": 9.109e-31,
}
for name, m in particles.items():
v_perp = np.sqrt(2 * T_J / m) # 熱速度
r_L = m * v_perp / (e * B)
print(f"{name}: ラーモア半径 {r_L*1000:.3f} mm(速度 {v_perp/1000:.0f} km/s)")
出力:
重水素イオン: ラーモア半径 5.005 mm(速度 1199 km/s)
電子: ラーモア半径 0.083 mm(速度 72623 km/s)
重水素イオンは 約5mm、電子は 約0.08mm。どちらも装置サイズ(数メートル)よりずっと小さい。だから粒子は磁力線に巻き付いたまま、容器の壁へ飛んでいけません。これが磁場閉じ込めの正体です。
② 磁場を強くすると閉じ込めが締まる
m_D = 3.344e-27
v_perp = np.sqrt(2 * T_J / m_D)
for B in [1, 5, 12]:
r_L = m_D * v_perp / (e * B)
print(f"磁場 {B:>2}T → イオンのラーモア半径 {r_L*1000:.2f} mm")
磁場を強くするほどラーモア半径が小さくなり、粒子がより磁力線に縛られます。強い磁場が閉じ込めに効く、もう一つの理由です。
電子は小さく、イオンは大きい
電子はイオンより軽いのでラーモア半径がずっと小さい(今回は約60分の1)。この違いが、プラズマ中の複雑な振る舞いを生みます。閉じ込めのスケールを決めるのは主に重いイオンのラーモア半径(約5mm)です。
巻き付いても端から漏れる
磁力線に巻き付いても、磁力線に沿った方向には自由に動けます。だから直線的な磁場では端から漏れてしまう。それを防ぐためにドーナツ状に磁力線を閉じたのがトカマクです。ラーモア運動だけでは閉じ込めは完成しません。
まとめ
- ラーモア半径は磁場中の荷電粒子が描く円運動の半径
- 重水素イオンで約3.5mm、電子で約0.06mm(15keV・5T)
- 装置サイズよりずっと小さいので磁力線に縛られる=閉じ込め
- 磁場を強くするほど半径が縮み、閉じ込めが締まる
もう少し詳しく(背景と理論)
磁場中の荷電粒子はローレンツ力を受け、磁力線のまわりを螺旋を描いて回ります。その回転半径がラーモア半径(ジャイロ半径) r = mv⊥/(qB) で、質量と速度に比例し、電荷と磁場に反比例します1。この小さな円運動が磁場閉じ込めの本質です——粒子は磁力線を横切って遠くへ逃げられず、磁力線に「巻き付いて」トラップされます2。強い磁場ほどラーモア半径が小さくなり、閉じ込めが良くなるので、核融合炉が超強力な超伝導磁石を必要とする理由もここにあります。ただし磁力線に沿う方向には自由に動けるため、トカマクは磁力線をドーナツ状に閉じて端からの漏れを防ぎます。重いイオンほど半径が大きく、電子は小さく回ります3。
次の一歩 🌸
磁気圧は磁気圧をPythonで、ドーナツ型のトカマク、閉じ込め方式は磁場閉じ込めへどうぞ。