
制動放射の損失をPythonで計算する|プラズマが"光って冷える"問題
2026-10-07 ・ 実践
超高温プラズマは、放っておいても光(X線)として熱を失います。これが 制動放射(ブレムシュトラールング)。核融合の自己加熱と競い合う損失で、特に不純物が混じると致命的になります。Pythonで計算し、なぜプラズマの純度が命なのかを理解します。
制動放射とは
電子が原子核のそばを通ると、進路が曲げられて電磁波を放ちます。これが制動放射。放射のパワーは電荷の2乗(Z²)と密度、温度の平方根に依存します。不純物(Zが大きい)が混じると急増するのが特徴です。
準備
pip install numpy
① 制動放射のパワーを計算
D-Tプラズマの制動放射損失を、簡易式で見積もります。
import numpy as np
def bremsstrahlung(n_e, T_keV, Z_eff=1.0):
# 制動放射のパワー密度 [W/m^3](おおよその係数)
return 5.35e-37 * Z_eff * n_e**2 * np.sqrt(T_keV)
n_e = 1e20 # 電子密度 [1/m^3]
for T in [10, 15, 20]:
p = bremsstrahlung(n_e, T)
print(f"温度 {T}keV → 制動放射 {p/1e3:.1f} kW/m³")
出力:
温度 10keV → 制動放射 16.9 kW/m³
温度 15keV → 制動放射 20.7 kW/m³
温度 20keV → 制動放射 23.9 kW/m³
温度が上がると放射損失も増えます。これを核融合の発熱が上回らないと、プラズマは冷えてしまいます。
② 不純物が混じると激増する
Z_eff(実効電荷)が上がる=不純物が混じると、損失が跳ね上がります。
print("不純物の影響(15keV):")
for Z_eff, note in [(1.0, "純粋なD-T"), (2.0, "軽い不純物"), (5.0, "重い不純物混入")]:
p = bremsstrahlung(n_e, 15, Z_eff)
print(f" Z_eff={Z_eff}({note}): {p/1e3:.1f} kW/m³")
出力:
不純物の影響(15keV):
Z_eff=1.0(純粋なD-T): 20.7 kW/m³
Z_eff=2.0(軽い不純物): 41.4 kW/m³
Z_eff=5.0(重い不純物混入): 103.6 kW/m³
不純物が混じると放射損失が数倍に激増。特に壁から剥がれたタングステンのような重い元素が混じると致命的です。だからプラズマの純度維持が最重要課題なのです。
不純物は『冷却剤』
Zの大きい不純物は制動放射を跳ね上げ、プラズマを一気に冷やします。核融合を止めたいなら不純物を入れればいい、というくらい効きます。だから壁の材料選びや、不純物を排出する仕組み(ダイバータ)が炉の生命線になります。
高温ほど核融合が勝つ
制動放射は温度の平方根でしか増えませんが、核融合出力は温度とともにもっと急に増えます。だからある温度を超えると核融合の発熱が放射損失を上回る。この「放射に負けない温度」を保つことが、自己燃焼の条件の一つです。
まとめ
- 制動放射はプラズマが電磁波(X線)として熱を失う現象
- 密度の2乗、温度の平方根、電荷の2乗に依存する
- 不純物(高Z)が混じると損失が数倍に激増する
- 純度維持と不純物排出(ダイバータ)が炉の生命線
もう少し詳しく(背景と理論)
制動放射(ブレムシュトラールング)は、電子がイオンの近くを通って急に曲げられる(減速する)ときにX線を放つ現象で、高温プラズマの主要なエネルギー損失の一つです1。損失は電子密度・イオン密度に比例し、温度の平方根に比例します。決定的に重要なのが、イオンの電荷数 Z の2乗に比例すること——だから炭素や鉄などの不純物が少しでも混入すると放射損失が急増し、プラズマが冷えて核融合を妨げます2。これがプラズマの純度を極限まで高める必要がある理由です。さらに、この放射損失は加熱とのせめぎ合いを生み、燃料や温度によっては損失が加熱を上回って点火不能になる下限(パワーバランスの壁)を課します3。純粋な水素同位体燃料が選ばれるのも、低 Z で制動放射を抑えるためです。
次の一歩 🌸
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