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核融合の放出エネルギーをPythonで計算する|E=mc²と質量欠損

2026-09-14実践

#核融合#E=mc2#質量欠損#Python#実践

核融合は「軽い原子核がくっつくとき、わずかに軽くなり、その差がエネルギーになる」現象です。カギは質量欠損とアインシュタインの E=mc²。この記事ではPythonで、D-T燃料(重水素+三重水素)の融合で生まれるエネルギーを実際の質量から計算します。太陽が輝く原理を、電卓のように確かめられます。

しくみ: 消えた質量がエネルギーに

反応の前後で原子核の質量を比べると、後のほうがわずかに軽い。この差(質量欠損)が E = mc² でエネルギーに変わります。核融合の莫大なエネルギーは、この小さな質量差から生まれます。

質量差がエネルギーになる

⚛️

D + T

反応前の質量

質量欠損

わずかに軽くなる

💥

E=mc²

エネルギー放出

準備

pip install numpy

① 質量欠損からエネルギーを計算する

原子質量単位(u)での各粒子の質量を使います。反応は D + T → He-4 + 中性子

import numpy as np

# 各粒子の質量 [u(原子質量単位)]
m_D  = 2.014102    # 重水素
m_T  = 3.016049    # 三重水素
m_He = 4.002602    # ヘリウム4
m_n  = 1.008665    # 中性子

mass_before = m_D + m_T
mass_after  = m_He + m_n
defect = mass_before - mass_after           # 質量欠損 [u]

# 1u = 931.494 MeV/c²(E=mc²の換算)
energy_MeV = defect * 931.494
print(f"質量欠損: {defect:.6f} u")
print(f"放出エネルギー: {energy_MeV:.2f} MeV")

出力は 放出エネルギー: 17.59 MeV。教科書に載るD-T反応の約17.6MeVと一致します。たった0.0189uの質量差が、これだけのエネルギーを生みます。

💡

MeVってどれくらい?

17.6MeVは原子1個あたりの話。小さく見えますが、化学反応(燃焼)の1原子あたりは数eV程度。核融合はその数百万倍のエネルギー密度です。だからコップ一杯の燃料が莫大な電力になり得ます。

② 燃料1グラムで何ができるか

1グラムのD-T燃料が全部反応したら、どれだけのエネルギーになるか計算します。

# 中性子とHeに分配されるが、反応1回あたりの総エネルギーで概算
J_per_MeV = 1.602e-13
avogadro = 6.022e23
mol_mass = 5.0                # D+Tでおよそ5 g/mol

reactions_per_gram = avogadro / mol_mass
energy_per_gram_J = reactions_per_gram * energy_MeV * J_per_MeV
print(f"1gあたり: {energy_per_gram_J:.2e} J")
print(f"= 石油換算 約 {energy_per_gram_J/4.2e10*1000:.0f} kg 相当")

1グラムで約3.4×10¹¹ジュール——石油に換算すると数千kgぶん。核融合が「究極のエネルギー」と呼ばれる理由が、桁で実感できます。

⚠️

計算できる ≠ 実現できる

エネルギーが莫大なのは計算どおり。でも実際に取り出すには、燃料をプラズマにして超高温で閉じ込め、ローソン条件を満たす必要があります。「原理は単純、実現は激ムズ」が核融合です。

③ なぜD-Tが選ばれるのか

核融合には他の組み合わせもありますが、D-Tは比較的低い温度で最大の反応しやすさを持ちます。だから最初の実用炉の本命です。反応しやすさ(反応断面積)の観点はなぜ難しいのかで扱います。

まとめ

  • 核融合のエネルギーは反応前後の質量差(質量欠損)から E=mc² で生まれる
  • D-T反応の放出エネルギーは約17.6MeV(計算値17.59MeVと一致)
  • 1原子あたり化学反応の数百万倍。1gで石油数千kg相当
  • エネルギーは莫大だが、取り出すにはローソン条件を満たす必要がある

もう少し詳しく(背景と理論)

核融合がエネルギーを生むのは、軽い原子核が融合してより安定な核になるとき、わずかに質量が減り、その差がアインシュタインの E=mc² に従ってエネルギーになるからです1。この「安定さ」を表すのが核子あたりの結合エネルギーで、鉄(Fe-56 付近)が最も安定な谷底にあります。だから鉄より軽い核は融合で、重い核は核分裂でエネルギーを放出します2。D-T 反応 (²H + ³H → ⁴He + n) では17.6 MeV が放出され、その約8割(14.1 MeV)を中性子が、約2割をα粒子(⁴He)が運びます3。核分裂と比べ、同じ質量あたりの放出エネルギーは核融合の方が大きく、しかも燃料が海水由来の重水素で豊富、高レベル放射性廃棄物も出にくいのが魅力です。

次の一歩 🌸

燃料の性質はD-T燃料、成立条件はローソン条件をPythonで計算、難しさの全体像はなぜ核融合は難しいのかへどうぞ。

Footnotes

  1. 反応前後の質量欠損 Δm が E=Δm·c² のエネルギーになる。核反応では化学反応の数百万倍のエネルギー密度が得られる。

  2. 核子あたり結合エネルギーは Fe-56 付近で最大。軽核は融合、重核は分裂で、より安定な鉄側へ向かうときにエネルギーを放出する。

  3. D-T 反応は17.6MeV放出。中性子が14.1MeV(約80%)、α粒子が3.5MeV(約20%)を担う。α粒子はプラズマを自己加熱し点火に寄与する。

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