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プラズマの熱速度をPythonで計算する|"温度"は粒子の速さ

2026-10-02実践

#熱速度#マクスウェル分布#温度#Python#実践

核融合で「1億℃」というとき、それは粒子がどれほど激しく動いているかを表します。温度と速度の関係をマクスウェル・ボルツマン分布からPythonで計算し、超高温プラズマの中で粒子がどれほど高速で飛び回っているかを確かめます。

温度=運動エネルギー

気体やプラズマの温度は、粒子の平均運動エネルギーに比例します。速度には3つの代表値があります。

  • 最頻速度 v_p = √(2kT/m)
  • 平均速度 v_avg = √(8kT/πm)
  • 二乗平均平方根速度 v_rms = √(3kT/m)

準備

pip install numpy

① 重水素の熱速度を計算

核融合条件(10keV ≈ 約1.16億℃)の重水素の速度を求めます。

import numpy as np

kB_eV = 1.602e-19
m_D = 3.344e-27          # 重水素の質量 [kg]

T_keV = 10
T_J = T_keV * 1000 * kB_eV

v_p   = np.sqrt(2 * T_J / m_D)
v_avg = np.sqrt(8 * T_J / (np.pi * m_D))
v_rms = np.sqrt(3 * T_J / m_D)

print(f"温度: {T_keV}keV ≈ {T_keV*1000*11605/1e6:.2f} 億℃")
print(f"最頻速度: {v_p/1000:.0f} km/s")
print(f"平均速度: {v_avg/1000:.0f} km/s")
print(f"rms速度 : {v_rms/1000:.0f} km/s")

出力:

温度: 10keV ≈ 1.16 億℃
最頻速度: 979 km/s
平均速度: 1105 km/s
rms速度 : 1199 km/s

10keVの重水素は 秒速約1000km——マッハ3000という猛烈な速さで飛び回っています。この激しい衝突が核融合を可能にします。

② 速度分布を作って高速の裾を見る

マクスウェル分布は「平均は約1000km/sだが、もっと速い粒子も一定数いる」ことを示します。この高速の裾が反応に効きます。

def maxwell_speed(v, T_J, m):
    return (m/(2*np.pi*T_J))**1.5 * 4*np.pi*v**2 * np.exp(-m*v**2/(2*T_J))

speeds = np.linspace(0, 4e6, 400)
dist = maxwell_speed(speeds, T_J, m_D)

# 平均の2倍より速い粒子の割合
fast = speeds > 2 * v_avg
fraction = np.trapz(dist[fast], speeds[fast]) / np.trapz(dist, speeds)
print(f"平均の2倍より速い粒子: {fraction*100:.2f}%")

平均の2倍より速い粒子はごく一部ですが、この高速な粒子こそがクーロン障壁を越えて核融合を起こします。分布の裾が反応率を左右するのです。

🌱

なぜ『平均』では足りない

平均速度の粒子同士では、実はクーロン障壁を越えられません。核融合を起こすのは分布の高速側にいる少数の粒子。だから温度を上げて高速粒子の割合を増やすことが、反応率アップに直結します。

⚠️

温度の単位に注意

プラズマ物理では温度をケルビンでなく keV で表すのが慣習です(1keV ≈ 1160万℃)。エネルギーと温度を同じ単位で扱えて便利だからです。10keVは約1.16億℃、と換算できるようにしておきましょう。

まとめ

  • 温度は粒子の運動エネルギー。速度には最頻・平均・rmsがある
  • 10keVの重水素は秒速約1000km(マッハ3000級)で飛び回る
  • マクスウェル分布の高速の裾にいる粒子が核融合を起こす
  • 温度を上げると高速粒子が増え、反応率が上がる

もう少し詳しく(背景と理論)

熱平衡にあるプラズマの粒子は、みな同じ速度ではなくマクスウェル・ボルツマン分布という速度分布に従います1。温度は分布の「平均的な激しさ」を表すだけで、実際には平均よりずっと速い粒子が分布の高速テールに少数存在します。核融合にとってこれが決定的です——平均エネルギーではクーロン障壁を越えられなくても、このテールの高速粒子が反応を担うため、平均温度が障壁より低くても核融合は進みます2。反応率 ⟨σv⟩ は、断面積 σ と速度 v を分布全体で平均した量として計算され、温度に対して非常に敏感(急峻)に立ち上がります3。だから炉の設計では温度をわずかに上げるだけで反応率が大きく変わり、温度制御が重要になります。

次の一歩 🌸

反応の壁はクーロン障壁、プラズマの基本量はデバイ長とプラズマ振動数、成立条件はローソン条件へどうぞ。

Footnotes

  1. マクスウェル・ボルツマン分布は熱平衡の速度分布。温度が高いほど分布が広がり、高速粒子の割合が増える。統計力学の基本。

  2. 核融合を担うのは分布の高速テールの粒子。平均エネルギーがクーロン障壁より低くても、少数の高速粒子がトンネル効果と相まって反応する。

  3. 反応率 ⟨σv⟩ は断面積と速度を分布で平均した量。温度依存が急峻で、D-T では約10〜20keVで最適化される。

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