
プラズマの基本量をPythonで計算する|デバイ長とプラズマ振動数
2026-10-01 ・ 実践
核融合の舞台は プラズマ——原子核と電子がバラバラになった超高温の気体です。このプラズマを特徴づける2つの基本量、デバイ長とプラズマ振動数をPythonで計算し、プラズマが「なぜ集団として振る舞うのか」を理解します。プラズマの基本の定量版です。
2つの基本量
- デバイ長 λ_D — プラズマ内で電荷の偏りが打ち消される距離。これより大きいスケールでは、プラズマは電気的に中性に見える
- プラズマ振動数 ω_p — 電子が集団で振動する周波数。プラズマが電磁波にどう応答するかを決める
準備
pip install numpy
① 基本量を計算
核融合炉クラスの条件(密度10²⁰ /m³、温度10keV)で計算します。
import numpy as np
eps0 = 8.854e-12 # 真空の誘電率
e = 1.602e-19 # 電気素量
me = 9.109e-31 # 電子質量
kB_eV = 1.602e-19 # 1eV = この値のジュール
n = 1e20 # 密度 [1/m^3]
T_keV = 10 # 温度 [keV]
T_J = T_keV * 1000 * kB_eV # ジュールに変換
# デバイ長
debye = np.sqrt(eps0 * T_J / (n * e**2))
print(f"デバイ長: {debye*1e6:.2f} マイクロメートル")
# プラズマ振動数
omega_p = np.sqrt(n * e**2 / (eps0 * me))
print(f"プラズマ振動数: {omega_p:.2e} rad/s")
print(f" = {omega_p/(2*np.pi)/1e9:.1f} GHz")
出力:
デバイ長: 74.34 マイクロメートル
プラズマ振動数: 5.64e+11 rad/s
= 89.8 GHz
デバイ長はわずか 約74マイクロメートル。装置サイズ(数メートル)よりはるかに小さいので、プラズマ全体は電気的に中性に見えます。プラズマ振動数は約90GHz——この周波数以下の電磁波はプラズマに跳ね返されます。
デバイ長が『プラズマらしさ』の目安
系のサイズがデバイ長より十分大きいとき、初めて「プラズマ」として集団的に振る舞います。デバイ長より小さいスケールでは個々の粒子がバラバラ。この長さが、気体とプラズマを分ける物差しです。
なぜ電波が跳ね返る?
プラズマ振動数より低い電磁波は、プラズマ中の電子がすぐ応答して打ち消すため侵入できず反射されます。電離層が短波を反射して遠距離通信を可能にするのも同じ原理。核融合では、加熱用マイクロ波の周波数選びにこの性質が効きます。
まとめ
- デバイ長は電荷の偏りが打ち消される距離(核融合条件で約74μm)
- 系がデバイ長より十分大きいとき「プラズマ」として振る舞う
- プラズマ振動数は電子集団の振動周波数(約90GHz)
- 振動数より低い電磁波は反射される。加熱波の設計に効く
もう少し詳しく(背景と理論)
プラズマを「電離した気体」以上のものにしているのが集団的な振る舞いで、それを特徴づける基本パラメータがいくつかあります。デバイ長は、電荷の乱れが遮蔽されて中和される距離で、これより大きなスケールでプラズマは電気的に中性(準中性)とみなせます1。プラズマ振動数は、電子が平衡位置からずれたときに戻ろうとして振動する固有周波数で、これより低い周波数の電磁波はプラズマに跳ね返されます(電離層が電波を反射するのと同じ原理)2。系が「プラズマ」と呼べる条件は、デバイ球の中に十分多くの粒子がいて集団遮蔽が働くこと(プラズマパラメータ ≫ 1)です3。これらは、核融合プラズマの加熱・計測・閉じ込めを設計するうえでの共通言語になります。
次の一歩 🌸
プラズマの基礎はプラズマとは、熱運動は熱速度をPythonで、成立条件はローソン条件へどうぞ。